現代社会では核家族化が進み、また、一生独身で過ごす方も少なくありません。これからは、相続人が一人もいない方というのも増えていくのではないかと思われます。そんな相続人が一人もいない方に相続が発生した時に、その相続財産はどのようになるのでしょうか。
相続財産管理人
被相続人が亡くなって、その方に一人も相続人がない場合には、その相続財産は「法人」となります。法人と言っても会社等になるというわけではなく、相続財産は「相続財産法人」というまとまりとして考える事になり、管理され清算されていくことになります。亡くなられた方の財産等を誰も相続人がいないからといって、管理・清算をしないわけにはいかないからです。
実際に管理・清算を行う人として、利害関係者か検察官が家庭裁判所に申し立てをすることによって「相続財産管理人」が選任され、公告されます。一定の期間、公告をする事によって本当に相続人がないのかを確認します。そして、本当に相続人がないということになれば、相続財産管理人が相続財産を清算する事になります。
相続財産の清算
相続財産管理人はまず、被相続人に債権者はいないか、受遺者がいないのかを確認します。被相続人に負債がある場合は、相続財産の中から弁済をする事になります。遺贈(遺言の指定による遺産の贈与)を受け取るべき受遺者がある時には、その人へ指定された財産を遺贈します。それら、債権者への弁済、遺言で指定された受遺者への全ての清算が終わっても、相続財産が残った場合は、相続財産は、まず、特別縁故者に、特別縁故者がない場合には国庫へ帰属します。
特別縁故者
特別縁故者とは、被相続人と特別な縁故があったとされる人(法人も含む)の事です。「被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者」が請求をする事が出来ます。
よく、耳にするのが「内縁関係」にあった人です。被相続人に相続人が無いという場合に財産を得ることが出来ます。
国庫への帰属
相続財産管理人が清算して、特別縁故者にも分与して、それでも残った財産は国のものとなります。
関連条文
(相続財産法人の成立)
第951条
相続人のあることが明らかでないときは、相続財産は、法人とする。
(相続財産の管理人の選任)
第952条
前条の場合には、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、相続財産の管理人を選任しなければならない。
前項の規定により相続財産の管理人を選任したときは、家庭裁判所は、遅滞なくこれを公告しなければならない。
(相続債権者及び受遺者に対する弁済)
第957条
第952条二項の公告があった後二箇月以内に相続人のあることが明らかにならなかったときは、相続財産の管理人は、遅滞なく、すべての相続債権者及び受遺者に対し、一定の期間内にその請求の申出をすべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、二箇月を下ることができない。
第927条二項 から第四項 まで及び第928条から第935条まで(第932条ただし書を除く。)の規定は、前項の場合について準用する。
(特別縁故者に対する相続財産の分与)
第958条の3
前条の場合において、相当と認めるときは、家庭裁判所は、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者の請求によって、これらの者に、清算後残存すべき相続財産の全部又は一部を与えることができる。
前項の請求は、第958条の期間の満了後三箇月以内にしなければならない。
(残余財産の国庫への帰属)
第959条
前条の規定により処分されなかった相続財産は、国庫に帰属する。この場合においては、第956条第二項の規定を準用する。