良い遺言書を書くために

遺言書を書こうと思った時、果たして良い遺言書というのはどんなものでしょう?
一言で言うとしたら「争いを起こさない」遺言書ということになるのではないでしょうか。相続は家族の問題であると同時に相続人同士の利害の対立の場でもあります。そんな中で争いを未然に防ぎ、誰もが納得ができる遺言書を残す事が出来たとしたら、遺言者の「想い」が通じたという事で、とても良い遺言書が書けたという事になるのではないでしょうか。

もちろんご自分の亡き後にも「自分の財産だったものはご自分の自由に処分したい。」という気持ちを遺言書に残されることは重要なことですが、それが原因で相続人同士の争いになってしまっては悔いが残ることになります。遺言を書くにあたっては、「争いをおこさないために」という気持ちを念頭において頂くことが、とても重要な事ではないかと考えております。
また、そんな遺言書を書くためにはいくつかのポイントがあります。

1.遺言書は公正証書で作成

遺言書にはいくつかの種類がありますが、代表的なのが、公証役場で作成、保管してもらう公正証書遺言と自筆による自筆証書遺言です。遺言書は自筆証書であっても法律文章であるため要式性が重んじられます。一つのミスで無効になってしまうこともあり得るのです。意を決して書いた遺言書を無効にしないためにも自筆証書遺言より公正証書遺言がお勧め致します。公正証書遺言は最終的に公証人が遺言書を作成しますので遺言書が無効となることは殆どありません。
また、相続人が裁判所に行って検認の手続をする必要もありませんので、後々の相続手続きも格段に楽になります。

相続法の改正に伴って「法務局における遺言書の保管等に関する法律(遺言書保管法)」が成立し、自筆証書遺言の保管制度が新設されることになりました。これによって、自筆証書遺言を法務局で保管してもらえるようになりますが、施行は20年7月10日となります。これによって自筆証書遺言書の利便性が上がると考えられますが、法務局では形式的な不備をチェックするだけです。内容については遺言書の専門家のチェックを受けた方が良いことになるでしょう。

また、遺言書なんて残さなければ、法律に決められたように分けるのだからそれでいい、という考えもありますが、たとえ法定相続分通りに分割するとしても遺言書を書くよりもずっと煩瑣な相続手続きを行う必要が出てきます。しっかりとした遺言書があれば相続人は大変スムーズに相続手続きを行うことができるのです。このことからも良い遺言書を残すことはとても重要なことです。

2.相続人の遺留分を考慮する

兄弟姉妹を除く法定相続人には遺留分があります。法律で最低限認められた相続人の取り分です。遺留分を無視して遺言書を書いても遺留分を持つ相続人から請求をされると、結局その部分を渡さなくてはならなくなります。そのことを遺留分侵害額請求権といいますが、一般的には、たとえ相続させたくない相続人がいたとしても遺留分を考慮した遺言を作る事をお勧めします。現在は情報が多い時代で遺留分についての知識も広がっていますので、遺留分は原則「請求されるもの」とお考えいただいた方が良いと思います。
万が一、遺留分を侵害するような遺言を書くときは、その理由・想いを付言に書いておかれてはいかがでしょう。法律的には認められませんが、遺言者の思いを察してその相続人が納得してくれれば、遺留分を請求をされない可能性があります。

3.遺言書の内容は具体的に

あいまいな記載によって後で遺言書が無効になったり、相続人の間の理解の齟齬で争いの種となります。遺言の内容は出来る限り具体的に、正確に記載しましょう。

4. 専門家に相談

遺言書は紙とペンと印鑑があれば、いつでも自分自身で書く事が出来るものです。ですが、要式が正しいものでなければ無効になる事があり、遺言の内容に不満のある相続人から遺言書の無効を主張される事もありえます。正しく、正確な遺言を書くためには、是非、専門家とご相談下さい。行政書士は相続人の確定作業から遺言書の書き方のご相談、公証人との打ち合わせから、証人となる事まで全てをトータルサポート致します。

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